愚妻
一心同体だからこそ
まだこの言葉を使っている人はいるでしょうか?
最近ではほとんど耳にすることがなくなりました。
自らの妻を「愚妻」と呼ぶのは、日本人独特のものです。
女性からしたら、とても失礼な言葉だと思うでしょう。
男尊女卑を表す代表的な言葉のように感じる人もいるのかもしれません。
しかし、実はこの言葉は、決して女性を軽視している意味で使われていたのではありませんでした。
むしろ、妻と自分は一体であるという考えに基づいています。
つまり、妻と自分は、二人で一人ということです。
日本人は、自分自身を自慢することを良しとしません。
むしろ、謙遜してへりくだることに重きを置いています。
これは、【武士道】の【礼】の教えから来ている考え方です。
つまり、妻を褒めたり自慢したりするということは、そのまま自分自身を褒め、自慢しているということ…
日本人にとって、あまり好ましい姿ではありませんよね…
自分自身を表す時も「拙い者」として「拙者」という言葉を用いたように、相手を持ち上げへりくだることが日本人の【礼】の一つでした。
今は、妻自慢、夫自慢も耳にすることがありますし、「愚妻」という言葉を使う人はほぼいませんが、それでも「素敵な奥様ですね!」と言われれば、「いやいやそれほどでも…」と謙遜する人は多いでしょう。
その一歩引いた姿こそ、日本人が大切にしてきた【礼】の姿なのです。
ただし…
「礼に過ぎればへつらいとなる ~伊達政宗~」
何事も「度を過ぎない」ということも心がけたいものです。